
耳掃除は綿棒でしますか?それとも耳かき?どちらにしても、耳垢が乾燥していると取れにくいですよね。
実は、耳垢は耳の中で大切な役割をしていることをご存知ですか?ついつい気持ちよくて耳掃除を頻繁にしているという方は、要注意です。耳の乾燥は耳掃除のやり過ぎであることも。
ここでは、耳垢の正体と、正しい耳垢の取り方についてお伝えします。
もくじ
耳垢は耳を守るもの
耳垢がごっそり取れると気持ちがいいですよね。ところで、この耳垢は何で出来ているのでしょうか?耳の中のゴミのようにも思えますが、実は耳にとって必要なものでもあるのです。詳しくみていきましょう。
耳垢の正体は?
一般的には耳垢(みみあか)や耳糞(みみくそ)と呼ばれますが、医学的には耳垢(じこう)と呼びます。
耳の中は外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)に分かれていますが、外側から鼓膜までの間が外耳です。耳垢は基本的に外耳道の外側に発生します。そして、耳垢の正体は以下のようなものです。
・耳垢腺と皮脂腺からの分泌物
・外耳道の皮膚が剥がれたもの
・空気中のちりやほこり
耳垢腺と皮脂腺は外耳道の外側3分の1の皮膚にあるので、外耳道の奥の方には耳垢はほとんどありません。
耳垢の役割とは
「みみあか」「みみくそ」なんていうと耳の中には不必要なもののように感じますが、これも大切な役割があるのです。その役割を以下にご説明します。
・外から侵入するほこりなどのゴミを吸着する
・虫の侵入を防ぐ
・雑菌の繁殖を防ぐ
・皮膚を保護する
耳垢は、このようにして外耳道を守っています。耳垢のくさい臭いも、虫の侵入を防ぐための自己防衛なのです。
ほこりやゴミ、雑菌などから身を守った結果、塊となったのが耳垢ともいえます。さらに、耳の中には自浄作用といえるものがあり、耳垢が作られたとしても、自然と外にでるように作られているのです。
このように、耳の中の健康を保つために重要な役割をしているのが耳垢です。
耳垢の乾燥は遺伝?
耳垢が乾燥している人と湿っている人は何が違うのでしょうか?肌の乾燥と同じで、保湿不足かなと思うかもしれませんが、そうではありません。
耳垢の質は、遺伝が関係しているという考えが一般的です。日本人には乾燥タイプの耳垢が多く、欧米ではしっとりタイプの耳垢が多いという統計結果もあります。
耳垢のタイプは大きくわけて乾燥タイプ(乾性耳垢)としっとりタイプ(湿性耳垢)の2種類あります。
- 乾燥タイプ:淡黄色でカサカサしており、量は少なめです。
- 湿性タイプ:黄褐色でしっとりまとまっており、量は多めです。
なぜこのように耳垢の質が異なるのかというのは、耳の中にある皮脂腺と耳垢腺に関わっています。よく発達している場合は、分泌物が多くなるので、しっとりします。
耳垢が湿っているとワキガ?
ワキガの判断に耳垢の質が関係していることを聞いたことがある、という方もいるのではないでしょうか。これは一概にそうともいえないという答えです。
耳垢の湿りは皮脂腺と耳垢腺の発達に関係するとお伝えしましたが、耳の中にはワキガの原因とされているアポクリン腺もあります。耳の中のアポクリン腺が活発であれば、脇も活発だと思うのが当然ですが、これがニオイがきついかどうかには関係ありません。
したがって、耳垢の湿りでワキガかどうかを判断することはできません。ワキガは本人が気にするか気にしないかの問題です。気になればデオドラントスプレーなどで自分なりに対策し、笑顔で過ごすのが大切です。
耳の中がかゆいのは耳垢のとりすぎ
耳の中がかゆくて、頻繁に耳かきで耳掃除をしてしまうという方もいるでしょう。かゆみは耳垢がたまっているのが原因ではなく、触りすぎかもしれません。耳のかゆみ対策についてみていきましょう。
耳の中の乾燥と耳垢の関係
耳垢の役割の項でもお伝えしましたが、耳垢には皮膚を保護する役割もあります。耳垢には皮脂腺などからの分泌物である油分を含むため、撥水性があり、さらに弱酸性の性質で、耳の中を清潔に保ってくれています。
外耳道の皮膚にある耳垢は、バリア機能を備えているのです。肌の皮脂膜と同様に、皮膚の水分を閉じ込め、乾燥しないように守ると同時に、外部からの刺激からも守ってくれています。
かゆいからといって執拗に耳の中をかきむしると、必要な耳垢がとられてしまうばかりか、皮膚までも傷つけて炎症を起こし、余計にかゆくなってしまうのです。
耳垢が多くなる原因
それでも、耳かきをすれば耳垢がたくさん取れるので、耳かきしないと耳が詰まってしまうのではないかと思いますよね。そもそも、なぜそれほど耳垢が出来てしまうのでしょうか。
その耳垢は、耳かきをしたときに傷つけた皮膚の残骸かもしれません。耳垢は汚れなどを自然にまとめて外に排出してくれる役割があるのですが、耳かきで外耳道を傷つけて起こした炎症を治すためにできたかさぶたなど、皮膚の残骸がたまり、さらに耳垢が増えるという悪循環に陥ります。
それでも耳かきを続けて炎症を悪化させると、耳の中に水がたまったような感覚になります。この状態になると気持ち悪くて耳を触りたくなりますが、ここは我慢して耳鼻科にみてもらいましょう。
耳の中がかゆくなるその他の原因
耳の中がかゆくなる原因は、他にも次のような病気があります。
・アレルギー
花粉症などのアレルギー性鼻炎のときにかゆくなります。風邪で喉が腫れているときもかゆくなることがあります。
・接触皮膚炎
イヤホンなどが長時間耳に触れることで皮膚がかぶれておこります。
・外耳道炎
耳の中の刺激を繰り返すことで外耳道炎になりますが、汗などによるムレで炎症を起こすこともあります。
・外耳道真菌症
プールなどで外耳道に水が入ると、耳の中の湿度があがり、菌に感染しやすくなります。さらに、耳の中に傷があると、カンジダなどの真菌(カビ)が侵入しやすくなります。
耳垢を取りすぎることによって耳の中の自浄作用が弱まり、かゆみを伴うトラブルがおこりやすくなります。
耳がかゆいときは?
耳がかゆくてたまらない時は、耳かきでかきむしりたくなりますが、これだけは避けておきましょう。外耳道を刺激し、さらに炎症を引き起こすので、症状が悪化するだけです。
また、市販のかゆみ止めを塗るのもやめておきましょう。
かゆみが強いときの対処法は、「冷やす」もしくは「我慢する」です。つらいかもしれませんが、我慢していればそのうちにかゆみはおさまります。
アレルギーなど他の病気が原因の場合は、その治療をすればよくなります。
気になる場合は耳鼻科を受診しましょう。耳の中に使える点耳薬があります。症状に合わせた薬がありますので、ひどくならないうちに対処しましょう。
耳垢の取り方
耳垢は取らない方がよいのか、取った方がよいのかはよく議論されるところですが、専門家によれば、適度に耳掃除する方がよいとされています。かといって、間違った方法をしていれば、耳の中は荒れ放題になってしまいますよ。正しい耳垢の取り方をお伝えしましょう。
乾燥タイプ
乾燥タイプの耳垢は、基本的にそれほど耳掃除を必要としません。食事や会話など、顎を動かす動作で自然と耳垢が排出されていくのですが、乾燥タイプの耳垢の場合は外耳道にくっつかないので排出されやすいのです。
ただし、外耳道の形や体質によっては、外に排出されにくい場合もあるので、1~2週間に1回程度の頻度で耳掃除をするとよいでしょう。
<耳垢を取るときにやってはいけないこと>
・オイルや水で湿らせる
乾燥した耳垢はパラパラになって取りにくいので、オイルなどで湿らせれば取れやすくなると考えがちです。しかし、耳垢を湿らせると水分を含んだ耳垢が膨れて、外耳道に詰まりやすくなってしまいます。
・奥の方の耳垢を取る
耳掃除をしていると、ついつい気持ちよくなって奥の方まで耳かきを突っ込んでしまいたくなります。また、耳の奥でカサカサしていると、まだあるのではないかと奥までやりすぎてしまうことも。基本的に耳垢は外耳道の入り口近くにしか発生しないため、耳かきを奥まで入れることで、耳垢を押し込んでしまうことになります。
<正しい耳掃除のやり方>
- 耳かきでも綿棒でもよいですが、特に綿棒は大きすぎると耳垢を置くに押し込むだけになるので、ベビー用の細いタイプを使うのがよいでしょう。
- 耳かきや綿棒を入れるときは、耳の穴から1.5㎝程度までにとどめておきましょう。
- 外耳道の皮膚を傷つけないように、やさしく耳垢を外にかきだすようにしましょう。
- カサカサして取れにくい耳垢の場合は、粘着タイプの綿棒で軽くぬぐうとうまくとれます。
しっとりタイプ
耳垢が湿っているしっとりタイプの方は、乾燥タイプの方より外に排出されにくいことがあります。日本人でも2~3割ほどがしっとりタイプの耳垢だといわれています。
しっとりタイプの方は、耳掃除で耳垢を押し込むことで「耳垢栓塞(じこうせんそく)」が起こりやすくなります。これは、耳の穴に多量の耳垢の塊がつまり、耳が聞こえにくくなったり、耳鳴りや自分の声が響くといった症状がでたりする病気です。
このため、しっとりタイプの耳垢の方は、定期的に耳のケアをする必要があります。耳掃除の注意点は、乾燥タイプの耳垢と同様です。
<正しい耳掃除のやり方>
- しっとりタイプの方は、綿棒で耳の穴の入り口を軽くぬぐう程度でよいでしょう。
- 綿棒は入り口から1.5㎝くらいまでいれて、らせんを描くように3~4回拭き取ります。
耳垢が取れないときは?
取れないときは、無理に取らないことが大切です。外耳道の皮膚にこびりついていたり、大きな塊になって耳かきでかきだせない場合は、なんとか取りたいと思うかもしれませんが、我慢してください。
基本的には、そのうち自然に表にでてきて取れますが、気になる場合は耳鼻科で取ってもらいましょう。耳垢を奥まで押し込んでしまった場合も同様に、耳鼻科で処置してもらえます。
耳鼻科では、耳垢鉗子というピンセットのようなものと、吸引管を使って耳垢を取りますが、固まって取れない場合は、耳垢水という耳垢を柔らかくする点耳薬が処方され、家で点耳して耳垢を柔らかくしてから取り除いてもらいます。
無理やり引きはがそうとすれば、外耳道が傷つき、出血したり炎症を起こすことがあるので気を付けましょう。
耳を大切にする習慣
耳垢が乾燥しているしていないに関わらず、耳も老化とともに衰えていきます。耳掃除に注意するだけでなく、日頃から耳を大切にすることも考えましょう。
まず大切なのが、大きな音を長時間聞かないことです。イヤホンなどで大音量の音楽を聴くことは、耳に負担を与えますよ。他にも、規則正しい生活習慣や運動習慣も耳の健康に役立ちます。下にあげる耳によい栄養素も参考にしてください。
<耳によい栄養素>
・ビタミンB群
中でもビタミンB12は耳の機能に関わる栄養素です。耳の老化防止にも役立ちます。ビタミンB12が含まれている食品は、レバー、牡蠣やアサリなどの貝類、サンマなどです。
・カルシウム
耳の構造を正常に維持するために欠かせない栄養素です。耳は軟骨で複雑に構成されているのです。カルシウムが一日に吸収できる量は限られているので、毎日欠かさず摂ることが大切です。カルシウムが多く含まれている食品は、小魚、乳製品、海藻類、緑黄色野菜などです。
耳垢の乾燥は遺伝!正しいケアで耳の健康を守りましょう
耳垢の乾燥は、肌の乾燥と同じように保湿する必要はありません。気にしすぎて触りすぎるのも逆効果。耳の自浄作用を損なわないように、丁寧なケアを続けたいですね。
もちろん、耳鼻科で耳垢を取ってもらうのは保険適用内です。気になったら専門家の手をかりることも考えましょう。
この記事は、ライターが収集した情報に基づいて作成されています。効果には個人差がございますので、ご自身の責任でご利用・ご参考ください。
山川 ハナエ美容家
主婦兼フリーライター/元看護師/三児の母。独身時代は給料の大半をエステと趣味のバレエに費やす美容オタク。働く女性と育児奮闘中の母の気持ちがよくわかる。趣味は読書、英語学習、舞台鑑賞。年を重ねても内面が輝く美しい女性に憧れている。Recommend
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